030869 ランダム
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華神学園

華神学園

梓の放課後

「お姉さま♪カッコイイです~♪」

 梓はいつもの様にに弓道着の姿で剣道場の出入り口から怜奈の姿を眺めていた。剣道の指導をしていた小夜子が梓に気づき。小夜子は気づかれないように梓の元に歩み寄った。

「あ~ずさちゃん」

「!?…小夜子先生」

 小夜子に不意を突かれ呼ばれた梓は驚いた。

「弓道部の練習はどうしたのかな?」

 いきなり確信を突かれた梓は目を背けた。

「えぇっと、その…。あっ!やばっ」

 梓は何か言おうとするが、何か気づき。梓は剣道場に身を隠した。

「小夜子先輩ッ!!」

 ジャージ姿で黒髪をうなじ辺りまで伸ばし。身長140cmぐらいの童顔の女性は中等剣道場に来て早々、小夜子に怒鳴りながら叫んだ。

「どうしたのよ、郁美」

 郁美と呼ばれた女性。大賀郁美、小夜子の後輩で華神学園中等部の体育教師で弓道部の顧問。小夜子は右手で頭を撫でながら郁美をなだめた。

「子ども扱いしないでくださいッ!私も小夜子先輩と同じ先生なんですから」

 頬を膨らませ、目に涙をためながら郁美は小夜子に言葉を返した。小夜子は「泣かない泣かない」と言いながらポケットからハンカチを取り出し、ハンカチを郁美に渡した。郁美は渡されたハンカチで涙をふき取った。

「小夜子先輩。…梓ちゃん見ませんでしたか?いつも剣道場に来てるってマユちゃんが言ってたので」

 郁美は渡されたハンカチで鼻を噛み、小夜子に聞いた。小夜子は目線を剣道場に移した。目線の先では梓がバタバタと手を振りながら、口パクで『ここにはいないと』訴えていた。梓の周りには怜奈、眸、空が囲み、小夜子に「どうします?」とジェスチャーした。小夜子が郁美を見ると、郁美の目から涙が溢れかけていた。小夜子は怜奈に向け声を張り上げた。

「怜奈!梓ちゃんを連れて来て」

 梓はバタバタと抵抗していたが。怜奈に襟を掴まれ梓は郁美の目の前に連れてこられた。怜奈は梓を連れて行くと練習に戻った。

「お姉さま~」

 梓は怜奈に向け、声を上げるが。その声を遮るように郁美が叫んだ。

「梓ちゃんッ!!もう何回サボったら気がすむのですか!!毎日毎日、練習中に姿をくらまして…」

 郁美は目に涙を溜めながら、梓に説教した。小夜子は郁美の長々とした説教に飽き、剣道場に戻った。

「今日という今日は許しませんよ!!居残り50本終わるまで帰しませんからね」

「そ、そんな~」

 梓は郁美に袖を引っ張られ、剣道場を後にした。



 梓が弓道部の居残り練習が終わった頃。日はほとんど傾いていた。梓は練習が終わるとその場に尻餅をついた。

「ひやぁ~…やっと終わった」

「頑張ったな八神」

 梓の隣では艶やか黒髪を上腕ほどまで伸ばした女性、華神学園弓道部部長、大等部3年の唯緒マユが梓の居残り練習に付き合っていた。尻餅をついている梓の元に、郁美が歩み寄り、スポーツドリンクを手渡した。

「終わりましたか、お疲れさまです。けど梓ちゃんが悪いんですからね」

 梓は郁美から渡されたスポーツドリンクを飲みながら、「ごめんなさい」と平謝りした。飲み終えた空のスポーツドリンクを郁美に返した。梓は急いで更衣室で着替え。弓道場に顔を出した。

「大賀先生、マユ先輩…さようなら」

「はい、さようなら梓ちゃん」

「気をつけて帰れよ八神。不審者多いからな」

 梓は郁美とマユに一礼し弓道場を後にした。梓が弓道場を出ると弓道場の前に翔希が待っていた。

「お疲れ」

「翔希?」

 梓は驚き声をあげた。

「どうして翔希が?」

「緋斗さんに頼まれて」

「お兄ちゃんに」

 翔希は梓と喋りながら。華神学園を歩いていた。

「緋斗さんが不審者がうろついているから、危ないからって」

 翔希が梓に言うと。梓は笑いながら言葉を返した。

「もう、お兄ちゃん心配しすぎよ」

 2人が正門に差し掛かった所で、梓はカバンを翔希に投げ渡し。足早にその場を立ち去った。

「翔希、荷物お願いね」

「ちょっと…」

 翔希は梓の荷物も持ちながら、梓の後を追っていると。前方で梓の悲鳴が聞こえた。翔希は荷物をその場に置き。梓の悲鳴が聞こえた方に走って向かうと。血相を変え走ってきた八雲とすれ違った。

「八雲…?」

 翔希はなぜここに八雲と考えたが。それより梓の事が心配で急いだ。梓の悲鳴が聞こえた所に着くと、梓と1人の女性がいた。梓は壁にもたれ座り込み、もう1人の女性は携帯でどこかに電話をしていた。

「梓ッ!!」

 翔希は壁にもたれ座り込んでいる梓の元に駆け寄ると、梓はうわ言の様に呟いていた。

「しょ、翔希…やくもがやくもが……」

 梓の意識はそこで完全に途切れた。

「梓!しっかりしろ…梓」


第9話に続きます。


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